蝶々結び
住宅街の角を曲がると、白いアパートが見えた。


ここが先生の住んでるアパートかな……?


そんな事を考えながら、上着のポケットからガムを取り出した。


「あら、ガム?」


「あっ、うん」


疚(ヤマ)しい事は何も無いのに、運転中の母の視線を一瞬だけ感じた直後、何故か体が強張ってしまった。


「一枚ちょうだい」


「これはダメッ!!」


あれ……?


どうして……?


「何で?一枚くらいイイでしょ」


あたしが疑問を抱いた瞬間、母も同じ事を訊いた。


あたしもそう思う。


だけど、自分(アタシ)から咄嗟に出た言葉が、妙に引っ掛かった。


「何か……ダメな気がする……」


「何よ、それ〜!お母さん、これからずっと運転するのよ!」


あたしは、バッグからグリーンガムを取り出した。


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