蝶々結び
「はい、これ。いつもの」


ガムを一枚渡すと、母がそれを受け取った。


「ありがとう。でも、今日はブルーベリーの方が良かったなぁ……」


母がまた、あたしの顔をチラッと見た。


「いっ、いつもこれでしょ?だから、買っといたんだよ!」


「え〜っ!何か怪しい……」


「何もないよっ!!ほら、前向いて運転してよ!」


必死に言った後、ブルーベリーガムを上着のポケットに戻した。


その瞬間、携帯が鳴った。


「メール?」


「うん、友達……」





《今日から田舎だよね?
楽しんで来てね
あたしは補習中
上杉先生はいないよぉ…》





絵文字や顔文字だらけの可愛らしいメールは、優子からだった。


それを読んだ直後、少しだけホッとしている自分(アタシ)がいる事に気付いた。


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