向日葵
「・・お母さん!」
真紀子はベッドから跳ね起き、嬉しそうに、そして少し驚きながら微笑んだ。
澄子はゆっくりと病室に入り、紙袋を部屋の隅に置くと、パイプ椅子に腰をかける。
「調子はどうだい」
いつものように優しく話しかける澄子。
「普通だよ。ちょっと気持ちが悪いけれど。でも、子供達に心配かけたくないから」
と言い、真紀子は咳きこんだ。
澄子が椅子から立ち上がり、真紀子の背中をさすった。
背中を行ったり来たりしている、この手は、もう立派な老人の手だった。
最近、澄子はよく「しわが増えたなあ」と言うのが癖なんだ、と自分でケラケラと笑いながら言う。
でも真紀子にとってもは少し悲しいことでもあったりする。
お婆ちゃんなんだし、まあしょうがない、と自分で言い聞かせたりもしている。
「大丈夫かい?水を飲むか」
真紀子は激しく咳き込みながら、うん、と首を縦に振る。
澄子は紙袋のなかから一本のミネラルウォーターを取り出すと、真紀子に手渡す。
「ああ、おいしいわ。ありがとう」
無理をしながらも真紀子は微笑み、ミネラルウォーターを澄子に手渡した。
 
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