bule tears
1話 せきがえ!
「とと、隣よろしくっ……」

 聞こえるか聞こえないかぐらいの、か細い声で、恥ずかしそうにそう呟く少女。

 幸村彩陽14歳。中学2年生。

 小柄な体型で、内気であり、人と接するのを少々苦手としている。

 肩より少し長い髪の毛を緩く二つにまとめているが、くせ毛で毛先の方はクルンとなっている。

 そんな彼女は今、新しい席へと移動して来たのだ。

 席は男女ペアで机をくっつけているため、隣の相手が気になる。

 新しく彩陽の隣になった男の子は、「……あ、うん」と一度彩陽の顔を見上げたが、すぐに視線を窓の外へと戻した。

 それだけのことでも内気な彩陽は不安になった。

(わっ、わたし何かしたかな……)

 クラスメイト達は新しい席ですでに盛り上がっているというのに、2人の間に会話はない。

(どうしようっ……!!)

 耐えられなくなった彩陽は両手で顔を覆った。

「何、どうしたの幸村さん?」

 そんな彩陽を見た隣の席の少年は、全く心配してなさそうな表情で声かけてきた。

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