bule tears
「あっ、えっとその……何でもないの。気にしないで」

「そう」

 精一杯平然を装ったつもりだが、実に怪しい。

 しかし、その怪しい彩陽の態度を気にも止めず、少年はまた視線を窓の外にやった。

(わたし変に思われたかな!? 普通にしたつもりだったのに……)

 只今9月。長かった夏休みが終わって、2学期が始まったばかりだが、このクラスになって5ヶ月は経っている。

 2年A組は38名。もう大体の人が皆と話したことあるだろう。

(そう言えばわたし、三嶋くんと1回も話したことないな……)

 幸村彩陽は少年こと三嶋蓮と、今日初めて会話をしたのだ。

 言葉のキャッチボールが出来たかは置いといて。

「……ああ、あのっ!!」

 少ない勇気を振り絞る。

「何?」

「えっと、わたし三嶋くんと喋ったことなかったから、その……」

「そうだっけ?」

 その瞬間恐れていたことが彩陽の頭をよぎる。

(もしかして三嶋くん、わたしのこと知らないんじゃ……)
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