記憶の足跡
その時。突然ドアが開いた。
 
「ガラララ…」
(ドアはスライド式だ。)

そこから入ってきたのは
若い男の子だった。
恰好は、制服。学校帰りらしい。
若い…というか。まだ子供…。

男の子は、私の方など見向きもせず
慣れた手つきで、ドアを閉めた。

「ガラララ…」



ふと、男の子がこっちを見た。

「バチ」

目と目があった。

男の子は、目を大きくして
閉じていた口を、少し開けた。



(…表情から見ても驚いてることは
確か…だよね…。私のこと、
知ってる人かな?)


そんな事を考えていた時、
男の子はつぶやくようにある
名前を言った。

「あお…い?」
「え!?」

あ。思わず聞き返してしまった!
「あおい」って…もしかして
私の「名前」?
(びっくりして、顔をそらしてしまった…。)



「ドサッ」

荷物を落とす音がした。
私が男の子の方を見ると
その子は

「う…動かないでっ!ここにいて…」

そう言ってドアを飛び出した。

「ちょ…ぇぇ~…」


一体何が起きたのか
私にはまだ分からなくて。
ただ、言えることは1つ。


もう、眠ったままではいられないという事。








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