記憶の足跡
「…」

全員が、一瞬はっとした。
心臓が破裂しそうになった。
息が出来ない。苦しい。

一分ぐらい
沈黙が続いただろうか?

ここでやっと沈黙を破った。
父親だった。

「…そうだよ…」

息苦しさが、やっと抜けた。
でも、それと同時に
不安が全身を駆け抜けた。

父親が続ける。

「本人には、告げない方がいい
と、医者から言われたんだが…
言わずにどうやって家族と
信じてもらえるか…他に
方法がなかった」

父親の言葉を噛みしめながら
私は、少しずつ理解した。

「…話して…くれませんか?」

「あぁ…そのつもりだよ」

そっと、微笑む父親に
何とも言えない感情がこみあげてくる。




あたたかい…優しい気持ちが
溢れてくるみたい。


これが…父親っていうもの…
なのかな?
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