☆★グリン・ピース★☆
その手が、あの日の

光の母の手に重なった。


愛を含んだ暖かい手のはずなのに


葵は、何故かその手を

握り返せなかった。

飛びつけば得られるかもしれない

自分の居場所を咄嗟に拒絶した。


「今頃会え!って言うなら

なんで隠してたんだよ!

俺に兄貴がいる事を・・・。

みんな大人の勝手じゃないか!

どんな顔して会えって言うんだよ!」


そう言って葵は踵を返した。


自分でも何をやっているのか

混乱していた。


今までの孤独だった自分の

感情が一気に暴れ出すのを

止めようがなかった。


訳のわからない涙が溢れてきた。


園田が止めるのも聞かず

葵はダッシュで病院を飛び出した。


<今の俺じゃ会えないよ!>


心が叫び、泣いていた。





< 349 / 455 >

この作品をシェア

pagetop