仮想恋愛
 疑うのは当たり前だろう、私はそう思ったが、顔には出さなかった。


「いえ、そういうわけでは」


 そう言いながら私は軽く愛想笑いをすると、店を後にしようとした。


「待ってください」


 私が去ろうとすると女が自信ありげに私を呼び止めた。



「疑っているのはわかります、ならば、初めの一件は無料で見してあげましょう」


「無料、ただと言う事ですか」


「ええ」


 あやしい、今度は別の意味で疑ってしまった。何か新手の犯罪じゃないのか。

「最初はモニターとして受けてください、そこで体験した事を皆さんに言っていただきたいのです」


「そんな事言って、後で何だかんだ言ってお金を取るんじゃなんですか」


「ありません、もしなんでしたら、証明書を書いてもよろしいですよ」



 よほど、この女はあの機械とやらに自信があるのだろうか、私は少し気になって機械の事を聞いてみる事にした。


「どんな機械なんですか?」


「ここだけの話ですが」


 そう言いながら、女は顔を寄せる。
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