仮想恋愛
 殺す

 恭介を、もうどうしようもなかった。


 今日もあの女の所に行っていると思ったらはらわたが煮えくり返る。



 傷つけられた私のプライドは、その代償に傷つけた相手の命を必要とした。


 殺せば私の傷はいえるのだろうか、いや、癒えないのかもしれない、でも、もはやそんな事どうでもいい。



 あいつを、この私に傷を負わせたあいつを許すわけにはいかない。



 この決定に到るまでは何度か迷った。


 あんなやつでも殺せば人殺しだ。


 でもあいつのどこが人なのよ、こんなにも尽くしてきた私を平気で裏切っておいて。


 昔、恭介自身が言っていたじゃないか、人の気持ちを考えない奴はけだものだって。


 獣を殺して何がいけないのと言うのだ。



 別に保険金が目当てではないが、それも少しは考えた。殺せば五千万は入ってくるだろう。

 そのお金で傷ついた心をしばらく癒す。


 だから刑務所に入る訳には行かない。


 屈辱で煮えくり返った怒りとは別に、冷静な自分が、じっくりと作戦を練り続けた。


 私が疑われる事がなくアリバイも完璧にし、悲劇のヒロインを演じきらなくては成らない。

 そうだ、浮気している女のせいにしよう、あいつが殺した事にすればいい。


 いや、だめだ、浮気していたのがばれれば次は私が疑われる。


 あの女をかかわらしてはいけない。 


 毒殺、手間がかかりすぎる上に危険が高い。


 刺殺、絞殺、成功率が低い、男の力で抵抗されたらこっちが殺される可能性もある。
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