仮想恋愛
 犠牲者の方々の写真は、テレビのニュースでみた、恭介とまだ若いご夫婦とその息子、娘さんだった。


 二人ともかわいい子だった。


 私が殺したんだ、こんな幼い子を私が殺したんだ。


「これが保険金の五千万円です」


 後は簡単だった。交通事故でも検死は行われる、だが、それは、ほとんど外傷部に集中してやられ、血液検査などは、通り一遍のことしかやられない。


 私はそれが狙いだった。毒による変死体などは、徹底的に検察を行うのだろう
が、事故死だとわかれば簡単にしか行われないというのは調べがついていた。


 もしも詳しくし検査したとしても、あれほどの微量なら見つかるとは思えない。

 私がフィルターに少し塗ったぐらいじゃ死なないだろう。


 毒は事故の原因ではあるが、死因ではないのだから。


 通帳にはゼロが沢山並んだ。


 上手く行った。


 でも、だからなんだというのだ、うれしくもなんともなかった、なんでこんな事をしてしまったのだろうと言う後悔だけが私の中に強く残り続けた。


 こんなはずじゃなかった、私は幸せになるはずだった、そう幸せに。


 残りの五年間は常に悪夢に悩まされ続けた。


「なんで、ころしたのお姉ちゃん」


 小さな女の子の私を呼ぶ声。


「いたいよ、いたいよ」


 男の子の悲鳴、そして、恭介の血まみれの顔。


 私はその日から、毎朝のように悲鳴を上げながら、起きる事になった。


 きゃあああああああ。

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