ぼくの太陽 きみの星
「鷹耶……」




”鷹耶”




いつも心の中で呼んでいた名前。



口に出したのはこのときが初めてだった。



「どうしたの?」


鷹耶はさっと立ち上がると、涙の流れ落ちる頬を両手で挟んだ。



「一体どうしたの?」


静かな声とともに、腕が背中にまわり、ふわりとやさしく抱きしめられる。


あたたかい腕。



「もしかして、初めて”お兄ちゃん”じゃなくなったのかな……?」


ほんのり笑みを浮かべた形のよい唇が、涙で濡れた唇を塞ぐ。



「鷹耶……ダメ……」


しゃくりあげながら、鷹耶の手が体を這おうとするのを何とか引きはがした。
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