ぼくの太陽 きみの星
髪をざっと乾かして出てくると。

いきなり、胸元にコーヒーカップが伸びてきた。


「きゃっ」

「ほら、飲めよ」


険しい表情で無造作に手渡されるコーヒー。


「……」


(なんでいちいち命令口調なのよ……)


傘を持っていって、笑顔で「ありがとう」なんてちょっぴり言われたかった、それだけだったのに。

あの、みんなに向けられるやさしい笑顔で。


なのに、どういうわけか怒ってるし……

きっと、あたしがあまりに鈍くさいから、あきれてるんだ。


だめ、また、じわりと涙が……



あたしはソファにまるく腰掛けて、むくれながらもずるずるとコーヒーをすする。



……おいしい。



(何?このコーヒー)



すばらしいバニラの香り。
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