ぼくの太陽 きみの星
「もし帰りたくなったら、あたしのことはいいから、このお金でタクシー乗って帰りなさい。

……いい?」

「……はい」


あたしはうなずいた。



「……あの」


あたしは、またピンヒールをはいて出かけようとしているマリカさんに、おずおずと声をかけた。


「ほんとうにありがとうございます。

どうしたらいいのか実は困ってたんです。


……こんなにしていただいて……あの、いいんでしょうか」


「……実は、あたしもね」


マリカさんは肩をすくめた。


「あんたと同じなのよ。

昔に家出して、そのまま一回も帰ってないの。

親とはそのとき別れたきり」

「……ああ」

「だから、家出人見たら放っておけないってわけ。

……ごめんね、遅刻しそうだし、もう行くわ。

帰ったら、なんで家飛び出したのか話聞かせてよ。

じゃね」

「……」


あたしは無意識に、あわただしく出ていくマリカさんに手を振り返した。
< 196 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop