ぼくの太陽 きみの星

1. 黒い誘惑

「じゃあ、ぼくはこれで帰ります」


階段から降りると、未怜ちゃんのお母さんに軽く会釈した。


「未怜を見つけてくれて、本当にありがとう。

琢磨くんには本当に、どれだけ礼を言っても足りないくらいよ」


未怜ちゃんのお母さんは、ぼくの手を固く握る。


ぼくはかぶりを振った。


「ぼくが見つけたわけじゃない。

未怜ちゃんから来てくれたんです。

ちゃんと帰る意思があったんですよ」

「同じことだと思うわ。

未怜は必ず琢磨くんを頼ると思ってた」



お母さんは、2階へ続く階段を振り返った。


「……あの子、鷹耶くんが出ていったって知ったら、またあのときみたいに泣いて大騒ぎするかと思ったのに……」

「……」


(出て行ったというより、追い出したんじゃ――)


内心そんなことを思いながら、ぼくも、つられて階段を見上げる。
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