ぼくの太陽 きみの星
未怜ちゃんは、ひとつぶの涙すら流さなかった。


空っぽになった部屋をしばらくじっと見ていたかと思うと。

静かにドアをかちゃりと閉めて、空っぽの空間を視界から追いやった。


そして、自分の部屋のベッドにちょこんと腰掛けた。



恐ろしく無表情で。




「琢磨くん、明日からまた未怜をよろしくね」


ぼくはうなずいた。

ちょっぴり苦い気持ちで。


あの人もお母さんも、ぼくに未怜ちゃんをよろしくって言うけど、肝心の当人に言われたことがないんだから。



未怜ちゃんの家を出ると、電気のついていない2階の未怜ちゃんの部屋を見上げ、ぼくは歩き出した。



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いくら事情が伏せられていたといっても、みんなすんなりそれを信じるわけもなく。

学校では、いろんな推測が水面下で乱れ飛んでいた。



あれだけ目立つ鷹耶さんの、突然の転校。

未怜ちゃんの、長い欠席。

戻ってきた未怜ちゃんの、異様な変わりよう。
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