ぼくの太陽 きみの星
同じく横で隠れていた未怜ちゃんが、小さく息を吸い込んで身を固くする。



(ほら彼女いるから)



あの女の子の言葉を思い出す。





女の人が、駐めてあった赤い車に乗り込むと、窓を開けた。


「じゃあね、鷹耶。

また来るから」


低い、セクシーな声。

鷹耶、と名前で呼んでる。



お兄さんは、窓枠に手を掛けて運転席を覗き込んで、何やら話していたみたいだった。

ときどき、「一緒に」とか「今度」とかいう単語が、途切れ途切れに聞こえてくる。



そんな二人を見てると、まるで映画かドラマのワンシーンみたいだ。




やがて、お兄さんは、小さくうなずいて手を振った。


そして、走り去る赤い車が見えなくなるまで見送ると。


ひとつ肩でため息をついて、長い足でゆっくりと階段を上がっていき、ドアの中に消えた。



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