ぼくの太陽 きみの星

1.

カチャ。


「何だよ、何か忘れものでもした?……」



あたしが鳴らしたチャイムに、ざっくばらんな口調でそう言いながらドアを開けたのは、まぎれもなく鷹耶だった。



(……あ)



さっきの女の人が戻ってきたと思ったんだ。




黒い、濡れたようなつややかな髪が、少し伸びてた。

ドアを開ける仕草、静かな声も、長い前髪から覗く黒い切れ長の目も、以前のままの鷹耶。


でも、どことなく、大人びた気がする。

夢にまで見た、ひどく整った白い顔。



驚いてはっと小さく息を吸い込んで。

目の前にいるあたしを、鷹耶はしばらく無言でじっと見た。


夜の色の瞳にきらめく、探るような、謎めいた光。




「……よくここがわかったね」



久しぶりの鷹耶の第一声は、それだった。




丁寧な、静かな声。
< 264 / 295 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop