ぼくの太陽 きみの星
鷹耶は本をテーブルに置くと、ゆったりと立ち上がり、伸びをした。


「やったんだ」


はぁ、とため息まじりにそうつぶやきながら、近づいてくる。

あたしの足は、どういうわけか、歩き出そうとしない。



鷹耶は、細い指であたしの顎を軽く持ち上げて目を覗き込んだ。


「よかったね。

未怜はイケた?」


深い底なし淵のような瞳。



鷹耶にとってはただの遊びかもしれないけど、

あたしにとっては一大事なんだから。


だから、あたしのことはもう……どうかそっとしておいて。

お願い。



目でそう必死で訴える。



「……関係ないでしょ」


あたしは、顎をつかまれたまま、目をそらした。


「イケなかったんだ」


笑いを含んだ声。
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