ネコ専務シリーズ2
2分後、クックックッと無理に抑えた
笑い声が山手線の電車内に響き、

人々は、何だ? と一日の仕事の疲れを
にじませた顔を上げた。

視線をしばらく彷徨わせた人々は、やが
てシートの一角に、このダジャレだらけ
のクイズ本を読んで本気でウケている
ネコ専務の、目にうすく涙の光った顔を
見た。

相互不干渉が旨の東京猫たちは、それ
以上ネコ専務に関心をもたず自分たちの
考えや雑誌にすぐ意識を戻したし、

ネコ専務の方も、白猫のプライドにかけ
て、知らぬ人たちの前で大爆笑すると
いう無作法だけは控えたが、

その代わり、帰途いっぱい、ネコ専務の
クックックッは乗客たちの耳を打った
のであった。

追記:ちなみにこの本は、やはりあまり
   売れなかったそうである。

             おしまい


注:そもさん、せっぱとは、禅の用語で、
   「問題を出すぞ」「受けてたとう」
   の意味です


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