あの頃の穴
授業もそこそこ、終わりの歌を急いで歌い、里亜と若葉は学校を飛び出た。朝見掛けた道のりを再び歩く。 「ねぇ里亜ちゃん。このまま行くとあたしン家着いちゃう」 「ホントだ。若葉ちゃんの家の方だね…さすがにもういないか。あーあ」「家寄ってく?お父さんまだ帰ってこないし、ジュース飲もうよ」 「うん。期待外れて喉渇いちゃったね」 里亜は若葉の家に行った。 「うちの近く通った筈なんだよねぇ」 「そうなんだよねぇ…っと若葉ちゃんトイレ借りるね」 里亜はトイレの便座に座り、ため息をついた。 「一瞬だったか、ドキドキしたのは…」 里亜はトイレから出て、ランドセルを持った。 「お父さんもうすぐ帰って来る?」 「うん、大丈夫だよ。一人は慣れてるから。それより明日、少し早く家出れる?もしかしたらまたいるかも知れないし」 「っよし!OK。たーのーしーみーだ~」 「ハハッ↑なんか里亜ちゃんイキイキしてるね」「え(照)、んーなんかいい感じ」 若葉の家を後にし、明日の着る洋服を考えながら里亜は帰った。里亜と若葉は気付く筈もなかったが……………ついさっき、お笑いコンビ『ストリート』に近付く重要なポイントのそばにいたのだ。抜け道?近所に知り合いの家?コンビニ?隠れ家?マンホール?空飛んだ?…そのどれでも無い、意外な、〇〇。 「おやすみ」 「(母)もう寝るの。おやすみ」 里亜は明日に備えて早々にベットに入った。ニンマリしながらふと、お父さんと二人暮らしの若葉…一人で留守番も多いだろう、心細いだろう、お世辞にも立派とは言えない家。古ぼけたトイレ。【あたし、あんまり家に居たくないし、時々遊びに行こうかな。うちは両親も兄弟もいるけど、自分の部屋が一番いい。うるさい人がいないのがいい…】そんな事を考えながら眠ってしまった。里亜は夢を見た。ー暗い、真っ暗な、小さいトンネル?屈まないと通れないトンネルの様な所を若葉と靴を持って歩いてる。あっ…灯りが見えて来たよ……。 「ピピピピッピピピピッ…」 「……んあぁぁ…あ」 里亜は目覚まし時計に起こされ、バタバタと準備を始めた。 「(母)早いのね」