あの頃の穴
「あら、お見舞い?」 「はいっ!お父さん達とはぐれちゃって、出口は…」 「すぐそこよ」 「ありがとうございます」 二人はなんとか怪しまれず外へ出た。 「びびったぁ。怖かった」 「でもさ…ここ何処?全然知らない世界に来ちゃったんじゃ…」 「うぅ、何処なんだろね。…あ、あの人手に靴持って道歩いてる」 「あの人、家で消えた(ように見えた)中学生じゃない?」 「それっぽいね。あ、あたし達も靴履くの忘れてた」 「やっぱ必要だったね」 「ちょっとつけてみよう」 「うん」 民家はあるが山の上の方なのか人気は無く、たまに車が通りすぎるくらいだ。その男子中学生はまだ手に靴を持ったまま歩いている。 「ちょっと里亜ちゃん近付き過ぎだよ」「大丈夫だっ…」 「…あとつけてる?」 「え!?いやっ…違…あ!靴!履かないんですか」 「あ、忘れてた。君達は…もう帰りなさい。迷子になるよ」 「は、はいっ」 二人は怖くなり走って引きかえした。 「帰ろうか若葉ちゃん。もう一回病院へ」 「うん帰ろう。でも帰り道ちゃんとあるよねぇ」 「ひえぇー」 再び病院に入り、抜け穴へと続く廊下を急いだ。 「良かった来た時と一緒だ。帰ろ!」 「急ごう!」 二人は靴を持ち、来た時よりも物凄い早さで若葉の家のトイレに着いた。 「あ~良かった~帰れた」 「怖かった~…あ、お父さん!!」 「二人とも!こんな穴開けて何してるんだ」 「すみません!若葉ちゃんは悪くないです。あたしが寄りかかったらバリバリッて、ボコッて…弁償します…」 「いやいやいいんだよ。古いからね。怒っているのはもうこんな時間だよ?家の人心配するよ」 若葉とお父さんに家まで送ってもらった。 「ただいま」 「お帰り」