あの頃の穴
もう一つの街
朝、学校にて。           「…若葉ちゃんいよいよ、どうしよう。会った時の為に色紙とか持ってたほうがいいかなぁ」            「携帯でいいんじゃない?撮ったげるからさ」               「そうだね。今日も行く?」     「もちろん!」            放課後、二人で若葉の家に向かう。到着しランドセルを置いて、靴を持ち、早速穴をくぐる。            「着いた所が精神病院じゃなかったらいいんだけど」            「そうなんだよね、いちいち怖いし」 穴を通り抜け、人に見つからないように外へ出た。             「さーていったい、何処へ行けば」  「とりあえず…歩くか」       二人はあても無く歩き始めた。緑広がる自然の多い路。ふと、どこからか聞き慣れた音楽が流れる。         「…ヒデオだ」           「この先の方から聞こえるね」    二人は何気無く音がする方へ足を進めた。見えて来た大きな建物から聞こえてきていた。              「ここは…多目的ホール?」     「入ってみよ」           「えっ若葉ちゃん、大丈夫かな」   大きな扉をそーっと開けた。     「…わぁーすごい人……って、あれ!?」                  「…ヒデオ!?な訳ないよね。死んだもんね」                「似てる人っているんだねぇ。そっくりさんのコンサート?」        「…でも、ヒデオじゃね?声援がヒデオだし、似すぎだし」         「生きてたの?」          「…??」             不思議な感覚で二人はホールを出た。とりあえず歩く。民家もチラホラ見えて来た。中年の男性が家の庭で車を洗っている。                「ぁああー!!」           「何!里亜ちゃん」          「ああああの人あれだ。政治家、自殺した…」               「…里亜ちゃんヤバい、さっきのヒデオといい、私達来てはいけない所へ来てるんじゃ……」            「戻ろう!」            二人は病院へ走った。とにかく走った。病院の入口近くで里亜は思いきり誰かとぶつかった。
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