あの頃の穴
「すいませんっ」 「あっ…どうしたの君達」 靴を履いていないのを教えてあげた中学生だった。 「あ、お兄さん戻った方がいいです。ここヤバいです。死後の世界です!」 「死後の世界?…あははっ違うよ」 「だってヒデオが…あの政治家も」 「死んでないんだよ」 「……どういう事ですか」 「んー、ここじゃなんだから普通の世界に戻ろっか」 「はい」 三人で病院に入り、穴へと続く戸へ行く。 「あれ君達ここから来てるの」 「え、お兄さんもこっから来てるんじゃないの?」 「他にもあるんですか?」 「いっぱいあるよ。たまたま同じ病院ってだけですごいよ。じゃあ今日は僕もここから…」 三人は狭いトンネルを通りいつもの場所に着いた。 「トイレ?」 「はい。私の家のトイレです」 「君ん家?こういう場所にもあるんだ。いいね行き来が楽で」 「お兄さんは何処から?」 「ええと(窓から外を見て)、すぐ近くじゃん!」 「何処ですか」 三人は外へ出て若葉の家の隣の家の塀の前に立った。 「ここだよ」 「?穴がない」 「このまま通り抜け出来るんだよ。やってみる?また向こうの世界に行っちゃうけど」 「いやいやいや」 「じゃ、まず何から話そうか」 「ヒデオは生きてるの?」 「まぁ狭いけど家入って」 「再びお邪魔します」 若葉は三人分ジュースを注いだ。 「ヒデオもあの政治家も死んだふり。家族もわかった上で葬式とかしてんの。あの政治家の死んだ後、あっと言う間に話題は消えて、他の政治家もしらっとしてるでしょ。みんな生きてるって知ってるからね。ヒデオの場合はね…ファンにはかなりショックだよね。確かに後追い自殺もあったし…だからストリートの二人もかなり反対したそうだよ」