VS彼女
その1 綺麗な薔薇にはトゲがありすぎた
「ってことが、あったんだよ。この前」
思い出すのもおぞましい出来事を、俺は高校の食堂で友人二人に話していた。
「言っとくけど本当だぞ!?ほら、この前雨が降った日に……って聞いてんのか!?」
必死に説明するが、目の前の友人二人は飯と読書に夢中。
飯を食ってる奴は箸を止めて俺のことを細い目で見ているが、本を読んでいる方はずっと黙ったままで、たまにズレた眼鏡を上げるだけ。
「あー、聞いてる聞いてる。まさかお前がヤンデレ萌えだなんて思わなかったよ」
「誰がヤンデレ萌えだよ!!俺はツンデレ萌えだ!!」
「いや、聞いてねーよ。論点ズレてんぞ。つか、声でけーっての」
死ぬほど愛されるのはまんざらでもないが、殺されるほど愛されたくはない。むしろ、殺されるくらいなら愛されなくてもいい。
「おい眼鏡、お前もさっきから本ばっか読んで……俺と本とどっちが大事なんだ!!」
「付属品で呼ぶな。そんな、「私と仕事とどっちが大事なのよ!!」みたいな言い方されてもな」
「いいから答えろよ!!」
「何に。いや、俺はまぁ、お前がまさかそこまでマゾだとは思わなかったが。あと、どっちが大事かと聞かれたら……読書に決まってるだろ」