VS彼女

「もう一回聞いてみるか……」

ポツリ、と呟く。
それと同時に、カズの視線が気まずそうな色を写し、明らかに俺を通りこしていることに気付いた。
マモは本から目を話し、口をポカンと開けて俺の後ろをみていた。


……まさか。


肩を叩かれるのと、振り向くのはほぼ同時だった。


「秀、」


見透かすような闇色の瞳に、自分の姿が写る。
整った桜色の唇から、美声が漏れ、自分の名前をつむいだ。


「来て」


白く細い、まさに白魚のような指が、肩に触れ、少しだけ力が込められる。


彼女が、居た。

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