VS彼女
「み……美波……」
やばい。聞かれたか。何処から、というかいつから居たんだ。
硬直する俺に真っ直ぐ視線を向け、美波は無言で呼び掛ける。
妙な威圧感を感じてたじろいでいると、不意に彼女は俺から視線をそらし、その凛とした真っ直ぐな瞳を俺の友人二人に向けた。
「秀、借りていい?」
ぽつり、と彼女が言った。
借りていい、って、俺は物かなんかか。
「ど……どうぞ……」
「お好きに……」
カズとマモが控え目に言い、笑えていない愛想笑いを作る。
マジでか。そこでOK出すのか。いや、まぁ断れそうにないから仕方ないが。
友人二人の返事を確かめたあと、美波は俺に視線を戻した。
「来て」
よく通る声が端的にそう告げ、気が付けば俺は頷き、立ち上がっていた。
俺が立ち上がったのを見て、美波は歩き出す。今更着いて行かないわけにもいかないので、俺も恐る恐るそれに付いて行く。
ふと後ろを振り替えると、まるで売られて行く子牛を見るかのような目で、俺を見る二人の友人。
アディオス、アミーゴ。
とりあえず、生きてたらお前ら一発……いや、五発ぐらい殴らせろ。