VS彼女

食堂から連れ出された俺が、彼女に連れてこられた場所は、人気のない体育館の裏だった。

何ですか、決闘ですか。俺は果たし状を受け取った覚えはありませんが。

体育館裏という場所で思い付くことと言ったら、とりあえずベタに、告白、もしくは決闘だろう。
告白という線は有り得ないとして、残るは決闘。……いや、何で?

セルフツッコミを連発する傍ら、最悪の場合は彼女に殺されて埋められるのではないかと、かなり被虐的な妄想を浮かべる。
何処のサスペンスだ、という話だが、生憎、あんなことがあった以上はそれすら冗談に聞こえない。

逃げるか。いっそ逃げてしまおうか。

「秀」

「はいぃ!?」

いきなり名前を呼ばれ、思わず間抜けな声が出る。
びくんっ、と震える肩を情けないと思いつつ、俺は美波の表情を伺う。

美波は、やはり無表情だった。

透き通るような白い肌。深い闇色の髪に、吸い込まれそうになる夜色の瞳。
整った顔は、いつ見ても綺麗で、美しい。

ああ、そうだ。

この顔、この雰囲気に、俺は惚れたのだ。

ずっと見ていると洗脳されそうになる、この美しさ。彼女が美女として有名な本当の理由が、わかった気がした。

その美しい彼女の唇が、そっと言葉をつむぐ。



「別れよう」



……とりあえず耳を疑った。
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