可愛いなんて大嫌い。
「そっ、そうだな。うーんと……、葵が弁当を作って来てやるぞ! 1日だけな」

 実に都合がいいものだ。相手はプライドを捨てて膝まづくというのに、自分は弁当を作るで済ませやがった。

「わかったー。それでいいよ」

 葵の無茶苦茶な要求を受け入れてくれるとは、この少年は人間が出来ている。

「ねえ、1つ聞いていい?」

「なんだ? 葵は答えたいことしか答えないがな」

「神田さんはどうして一人称が“葵”なの?」

「……っ!?」

(こっ、こいつ! さっきのお返しで言ってるのかっ!?)

 先ほど葵も同じようなことを言っていたので天罰がくらったのだ。

「な、なんだよっ、悪いかっ!!」

「可愛いと思うよ」

「…………っはぁああ!? やめろ、気持ち悪いこと言うなっ!!」

 全身に鳥肌が立ってきた。

「なに? 照れてるの?」

「アホかっ!! 見てわからんのか!? 本気で引いているのだ!」

「なーんだ。つまんないの」

「なんだとぉ!? くそっ、絶対お前に勝ってやるからな!」

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