可愛いなんて大嫌い。
 男は葵の頭突きでその場に倒れ、後に保健室に運ばれたという。

 男を見る目がない葵は、こともあろうかゲイを好きになってしまったのだ。

 そしてそれは初恋だった。

 それからというもの、男は皆こんな奴ばかりと思い込み、究極の男嫌いとなってしまった。



「よし、葵はお前が嫌いになった。金輪際話しかけるな」

「え、何それ? 今日神田さんと初めて話したはずなんだけど……」

「まぁそうだが、嫌いなものは嫌いだ。理由はお前なんかに話すつもりはない!」

 初恋がゲイなんて死んでも言えない。

 そして、その男は少年みたいな可愛い子が好きだった。

 だから嫌いになったという単純で迷惑極まりない理由なのだ。

「何それー?」

「おっと、最後に1つだけ言いたいことがある。お前、そんなに可愛いのに、一人称は“オレ”なんだな」

 普通の男が聞いたら誰でもぶちギレそう発言である。それも嫌味たっぷりに。

「そーだよ」

 葵の嫌味作戦はなんとも可憐にスルーされた。

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