金魚すくい

「でも俺がお前に劣っている部分もあるだろ?」

「…ないよそんなの。」

考えてみたけどそんなのはあるわけがない。

いつも私は馬鹿にされる側だ。

「そうか?」

そっぽを向くのを止めて振り返ってみると、彼の視線はまだ金魚に向いたままだった。

「…なんで私を誘ったの?」

「なんでって?」

「晃なら他に花火大会に行く人一杯いるでしょ?」


晃は金魚を見つめたまま何かを考えているように黙っていた。

少ししてまた口を開く。


「“優しさ”」

「へ?」

「俺の中で決定的に欠けている部分ね。」

さっきの質問はどっかに置き去りにされたようだ。

「優しさだけ?」

「そう、それだけ。」

答えを聞いてまた落ち込んだ。
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