金魚すくい


「人ってさ、自分が持ってないものを持ってる人に惹かれるんだろうね。」

まるで金魚に語りかけているように小さな呟きだった。

「…どういう意味?」


「なんで俺が百合を誘ったのかの理由。」

意味がわからなくて首を傾げる。

「俺はお前の持ってないものを持っていて、お前は俺の持ってないものを持っている。一人じゃ完璧にはならない。」

私は黙って晃を見つめていた。

晃は私が何も言わないのを確認して続けた。

「美人な人とか頭のいい人には興味ない。それは俺の持ってるものだし。」

それを自分で言っても許される人はそうそういないだろう。


「吊り合わないとかじゃなくて、二人で持ってないものを補えばそれでいいんじゃないの?」


その言葉を言い終えた彼の視線は真っ直ぐ私に向いていた。
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