%コード・イエロー%

私はむっとして、答えた。

こういうのは、最初が肝心だ。


「あの、私は藤崎です。

名前を呼びすてにされると、色々言われて困るので、藤崎でお願いします」


別に周囲の目なんて、どうでもいい、と言いたいところだが、

これが、師長の耳になんか入ったら、ものすごいヒステリーを起こされる。


彼女は、医者とハケンの関係を、最も嫌うから。


きっぱりと言った、私の言葉の何がそんなに面白いのか。

仲地は、ますます嬉しそうに微笑んで、私との距離を詰めようとする。


とっさに後ろに一歩ひくと、仲地がさらに前に進み出た。


後ろは、行き止まりだ。

そうわかってはいても、前進する仲地に対して、私は、後退するしかない。


よろよろと後ろ足で進むと、とうとう背中が壁に当たった。


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