%コード・イエロー%

「誰だ、てめぇは!」


患者さんが、興奮して叫ぶ。


「私は、外科の医師で、仲地といいます。

前田明(まえだあきら)さんですよね。8階西に入院されてる」


自分の名前を言い当てられて、患者さんは、ほんのわずか、気をそがれたようだ。


なんで、知ってるんだ、という言葉は、最初の勢いほど強くはなかった。


「あなたの担当ではありませんけど、知ってますよ。

8階は、全フロア外科の入院ですからね。


どうされたんですか?

今の時間、病棟は就寝のはずでしょう?」


落ち着いたその口調は、とても、さっきまで私を脅していた人物と同じとは、

到底信じられない。


けれど、それは、なんとなく人の気を静めるような、温かみのある声で。


それは、患者さん--前田さんも同じだったのか、

永井君をつかんでいた腕が、力なくだらんと、はずれた。


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