%コード・イエロー%
それを見ると、前田さんはぶつぶつと不満を吐き始めた。
ナースコールを呼んでも、看護師が来ないこと。
同室の患者さんのうめき声が気になって、夜眠れないこと。
散歩に出ようとして、Q外から外へ行こうとしたら、
永井君に止められたこと。
患者さんの中には、病棟から脱走して行方不明になる人もいて、
夜間の外出は禁止されている。
もちろん日中でも、医師の許可がなければ、一時退院はできないけど、
自己退院してしまう人が、少なくない。
それは、家庭の事情、お金の都合が付かない、病院が気に入らないなど、
さまざまな理由があって。
ほんの少し、医者や、看護師が踏み込んだくらいでは、解決のできない問題ばかりだ。
「それは、大変ですね。
では、私が今から一緒に病棟へあがりましょう。
看護師も、夜間は人がいなくて、なかなかお世話できないんですよ。
決して、前田さんの事を軽んじてるわけではあるませんから」
そう言うと、仲地は、前田さんを連れ立って、エレベーターの方へと歩き出した。