%コード・イエロー%
どこかから、すすり泣く声が聞こえる。
どこを見ても、黒い服ばかりが目立つその場所で。
私は、誰かの洋服の裾を握り締め、身を隠すように立っている。
人々が次々に頭を下げ、むっとした匂いが鼻をつく。
私は、その匂いが嫌で、顔をしかめる。
それが、線香という名のものであることは、このとき幼かった私は、まだ知らなかった。
「春菜!春菜っ!」
小さな白い四角い箱に、誰かがすがり付いて泣いている。
周りを見渡すと、みんなハンカチを手にして、こぼれる涙を拭っていて。
・・春菜ちゃん?
その小さな箱に向かって、みんな大好きな姉の名前を叫んでいる。
・・そこに、いるの?
もう4日も会っていない。
4日も顔を合わせないなんてこと、今まで一度もなかったことだ。
私は、姉に会いたくて、何も考えずその箱の中を覗き込んだ。