%コード・イエロー%
「いててててっ!」
私の斜め後ろから、突然50代くらいのオヤジが、悲鳴を上げた。
きちんとスーツを着込んだ、一見サラリーマン風の男だ。
周囲の視線が、一斉にそこに注がれる。
「何しやがる!」
その男は、自分の手首をひねり上げている若い男に、怒鳴りつけた。
「うるさい、黙れ」
私は、はっとして、その若い男を見た。
フェイクタイの入った、7分袖のシャツに、細めの黒いパンツ。
シンプルなスタイルだけど、親父の手首を高々と持ち上げているその腕には、
あまりファッションに興味のない私でも、一目で、高級だとわかる腕時計が、きらりと光っている。
この人ごみだというのに、その男は、他の人たちよりも頭一つぬきんでていて、
190センチ近い身長がありそうだ。
私からは、後頭部しか見えないので、どんな顔かはわからないけど。