%コード・イエロー%

そんな中、時々だけど、ありがとう、って言ってくれる患者さんがいて。

そういう時は、一気に幸せな気分になる。

私たちの仕事が、ちょっとは役に立ったのかな、って。

だから、永井君の言うことも、よくわかる。


「患者さんもさ、いらいらしてるのは、病気のせいかもしれないし。

辛いときに待たされるのは、きついと思うからさ。

受付に不満をぶつけて、少しでもすっきりするなら、それでもいいかな、って」


「永井君って、人間できてるよね」


私の言葉に、照れたように顔を赤くする彼が、とてもまぶしく見える。

愚痴ばっかり言ってるのは、患者さんじゃなくて、私なのかも。


「ありがとうね、永井君」


「え?何が?」


「なんでもない」


永井君といると、自分の心が洗われる気がする。

実を言うと、最初は苦手だった。

奇麗事ばかり言う人だなって。


けれど、仲良くなるとわかる。

多分、彼は、愛されて育った人なんだ。

物事を素直に感じることのできる人。


彼が浴びる太陽の光を、私もちょっとだけ浴びた気になれる。
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