%コード・イエロー%

「鈴木先生・・・」


私の口からこぼれた言葉を拾って、永井君が振り返った。


「え?それって、研修医の先生?」


普段外来にも病棟にもいない永井君は、ここに勤務する医者の顔をあまりよく知らない。

Q外の当直の医師は、専属の3人を除けばあとは交代制だ。

私だって、大勢いる医師、しかも研修医なんてころころ入れ替わるから、

普段なら覚えてないとこだけど。


彼には見覚えがあった。

外来に、自分のカルテを出してくれと言いに来た医者だ。

里佳子と二人で、つぶれそうだ、と予想した医師。


私たちが手助けするまでもなく、Q外の責任者である先生が、鈴木を取り押さえた。

がっくりとうなだれる鈴木は、何かわけのわからない言葉をぶつぶつと吐き続けている。



・・かわいそうに。真面目な先生だったんだ。



ここで働く人間がつぶれるパターンは、2種類だ。


体が壊れるか。


精神が壊れるか。



< 239 / 481 >

この作品をシェア

pagetop