%コード・イエロー%

里佳子のお母さんは、医師たちが集まっている方にちらりと目をやり、小声になった。


「その患者に説教もせずに、さっさと帰した馬鹿がいる、って

診療部長が、ぐちぐち言い始めたの。

そしたら、急に鈴木が切れて」


医者たちに囲まれて、鈴木がどこかへ連れて行かれる。

今日は、このまま帰されるのだろうか。


一般の会社でも同じことだと思うが、

どんな小さな社会にも、人間関係というものは存在して。


医者の間にも、当然のようにイジメの構図があったりするのだ。

気に入らない新人をいたぶって、自分のストレスを発散する。


現実とは、そんなもんだ。

学歴が高いから、人格までが素晴らしいなんて、そんなのは幻想だ。


つぶれると予想したものの、まさか、こんな風になるなんて。


私は、ショックを受けて、途次についた。

四角い閉鎖された空間を一歩出ると、そこはすでに暖かい日差しに包まれている。


明るい空を見て、気分が落ち込むなんて、おかしいのだろうか。

でも、ときどき、無性に腹がたつ。

私がこんなに苦しいのに、さわやかに晴れ渡りやがって、って。









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