%コード・イエロー%
住み慣れた我が家、ではなく、居候をしている部屋へと徒歩で帰宅する間、
暑くも寒くもなく輝く太陽と、澄み渡った空が、私を追いかけてきた。
鞄に鍵が入っているのはわかっているけど、私はインターホンを押す。
だってやっぱり、勝手に入るのは気が引ける。
「おかえり」
扉を開けたのは、当然、この部屋の主。
「た、ただいま」
ぎこちなく上ずった声を出してから気づいた。
“ただいま”。
そんな台詞を発したの、何年ぶりだろう。
一人暮らしを始めてから、すでに10年近い。
ということは、少なくとも10年は口にしていないわけだ。
「なんかあったのか?」
私って、そんなにわかりやすいのだろうか、
そんな疑問が頭に浮かぶくらい、亮雅は私の顔を見たとたん、探るような顔を見せた。
「ええと、実は・・・」
私が話さなくても、病院に行けばわかってしまうことだ。