%コード・イエロー%

ふわりと頬を撫でる風の温度に、夏が過ぎ去っていくのだと感じる。

診療所と違い、年中救患の受け入れをやっているうちの病院では、

当たり前のようにお盆の出勤もあった。


暦は、9月。

亮雅と暮らし始めて、早くも4ヶ月になろうとしている。


難航されるかと思われた不動産屋との話し合いは、

こちらに弁護士がついたと知ったとたん、ころりと掌を返した相手によって、あっさりとかたがついた。

多分、違法ぎりぎりの商売なんだろう。


いくら部屋に入れてくれると言っても、一度そんな目に合って、そのまま住み続ける気にはなれない。

さっさと引越したいが、次の部屋を借りるにもお金がかかる。

結局、引越し費用を貯めるまで、という名目のもと、今も亮雅の部屋に居候をさせてもらっているわけだが。


学生の姿が目にしみて、私は無意識に顔を背けた。

彼女たちは、やがて国家試験を受けて看護師になる。

多分、早く一人前になりたくて、うずうずしていることだろう。


けれど、今が一番楽しい時期なのだ。

そのことに気づくのは、ずいぶん後になってからのことだと思うけど。


ローヒールをパタパタと鳴らして、私は更衣室へと急いだ。



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