%コード・イエロー%
私が思わず大きな声を出したので、沢渡が口元に指をたてて、しっ!とジェスチャーした。
「どうも脳卒中だったらしいんだけど、運ばれたときには手遅れでね。
けど、昼間にうちの受付をしてたことが発覚して遺族が騒いでるんだよ」
「けど、それって先生のミスでしょう?なんで大森さんが?」
病気を見逃したのは、医師の責任だと考えるのが普通だろう。
しかし、沢渡の口から語られたのは驚愕の事実だった。
「それが、先生にかかってないんだよ。
大森が、内科の症状じゃないからって、耳鼻科にふったらしくて」
あっ、と再び私は大きな声を出しかけた。
『あくびばっかりして人の話しをちっとも聞かないの』
『耳がよく聞こえないとか何とか言っちゃってさ』
大森の話が鮮やかによみがえる。
あれは、患者さんがふざけてたんじゃない。病気の前兆だったんだ。
「耳鼻科の先生は気づかなかったんですか?」
平静を装って、尋ねた。
「それが、耳鼻科がかなり混んでたもんだから、本人が帰っちゃったらしくてね。
結局医師とは話をせずに追い返された、みたいな事を言ってるらしいよ」