%コード・イエロー%

亮雅に会いたかった。

それは、恋人が切ない思いを感じて無性に顔を見たくなる、という性質のものではなく。

私はただたんに、彼に質問したいことがあったのだ。


そういうときに限って、亮雅が現れることもなく、残業もなかったりする。


「ねぇ、夏夜。今日ちょっと飲みに行かない?」


更衣室で着替えながら里佳子が声をかけてきたのは、多分落ち込む私に気を使ってのことだろう。


「今日はいいや。ちょっと用事もあるし」


用事があるのは本当なのだが、里佳子は複雑な顔をした。


「あのさ、あんまり色々考えない方がいいよ」


「ん?」


「患者さんが亡くなったのは不幸だけど、夏夜のせいじゃないんだから。

悪いのは大森さんだよ。先輩に確認もせずに患者さんを帰しちゃったんだし」


里佳子の言うことは、正しいのだと思う。

患者さんの容態について話を聞くのは、この病院では看護師の仕事だ。

そして、どの科にかかるのかはっきりしない場合は、両方の科の受付をする、というのがきまりになっている。



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