%コード・イエロー%
夏を過ぎると、急に日が短くなる。
残業せずに出てきたのに、空はすでに真っ暗だ。
最後まで心配そうな顔をする里佳子と別れ、私は病院を出るとすぐに鞄から携帯を取り出した。
着信も、メールもないということは、忙しいのかもしれない。
私から亮雅の携帯にかけたことは一度もない。
私は、着信履歴を確認してボタンを押した。
5分だけでいいから、と頼んで出てきてもらうつもりで。
・・亮雅。お願い、出て。
飲み会の途中で退席したのは脳外の医師だ。
そしておそらくその時救急車で運ばれたのは、あの患者さんに違いないだろう。
祈る私の肩を、誰かがぽんと叩く。
携帯に神経を集中していた私は、近づく人の気配を少しも感じなかった。
振り向くと、すぐに白髪が目に入った。
「海東先生」
それは、内科の海東だった。
「ちょっと時間あるかな?」
そんな気分ではなかったが、海東のせっぱつまったような目を見ると、
断ることができず、私は小さく頷いた。