%コード・イエロー%

気がきかなくてすまないね、という海東に連れてこられたのは、全国チェーンのファミレスだった。

平日のせいか、不況のせいか、空席が目立つ。

その一番奥の禁煙席に、向かい合って腰掛けた。


「無理に誘って悪かったね。その、デートとかがあったんじゃないのかな?」


「いいえ、用事なんてないです。恋人もいませんし」


恋人もいない、という台詞を、私は強調した。

自分の気持ちをごまかすためというのもあったが、海東が“デート”という言葉を選んだことが気になった。

亮雅のことで、何か感づいてるんじゃないのだろうか。


私が和食のセットを頼むと、海東も同じものを頼んだ。

煮物が中心のヘルシーなやつだ。


「若いのに、和食がすきなの?」


「はい。小さい頃から自炊してたんで、なんとなくそうなったんです。

和食の方が経済的にも楽だし」


「そう、か。お母さんは、元気かね?」


「え?母をご存知なんですか?」


「い、いや、その一般的にの話だよ」


慌てて視線を落とす海東の答えは、なんだかうそ臭く思える。

一般的に、というなら、ご両親は元気か、ときくんじゃないだろうか。


医者というのは、横のつながりが広い。

同じ大学に行った人間は、もれなく同じ業界に就職するわけだから、当然と言えば当然か。

多分、海東は知っているのだろう。直感的にそう思った。


私の母が、精神病棟に入院していることを。


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