%コード・イエロー%
うぬぼれているわけではない。
たかだか数年の勤務で、この病院の重鎮になったつもりもない。
それでも、忙しい受付を最低限の人数で回しているのは、自分や里佳子の努力の結果だという自負があった。
だが。
「4月は入院して欠勤。それで理由は充分でしょ」
そういうと、その男は腕時計をちらりと見て立ち上がった。
「次の勤務先については、改めて支社の担当者から連絡が来ると思いますから、
もし働く気があるなら、自宅待機でお願いします」
「そんな!欠勤の件は確かに申し訳なかったと思います。
でもあれは病気で仕方ないことですし、だいいちどうして今頃そんなことが問題になるんですか?」
会議室を出ようとする男を制して、私は抗議の声を上げた。
そりゃ、そうだろう。
いくらなんでも、無茶苦茶だ。
半年前の事を持ち出して、今日でクビだなんて。
男は私を見おろして、いや見くだして一言言い放った。
「本当の理由は、あなたが一番良く分かってるでしょう。
医者をたらしこんで同棲するなんて、おおやけにしないだけ感謝すべきだ」
ばたん、と閉まる扉の音が私の胸にずしりとこたえた。