%コード・イエロー%

「あ、お帰り。ご苦労さん!

ね、台風上陸したらしいよ。帰りは気をつけないと電車が止まって・・・って、夏夜には関係ないか。徒歩だもんね」


受付に鞄を取りに来た私に、里佳子は盛んに話しかけてきたけど、

何を言ってるのかまるで頭に入ってこない。


「どうしたの?なんか顔が真っ青だよ。ヒョロのやつ、そんなきついこと言った?」


ヒョロというのは、さっきの支社の社員のことだ。

背が高い割には、体の厚みがなく不健康そうで、そんなあだ名がつけられた。

つけたのは、もちろん里佳子だ。


「あのさ、里佳子」


「あ、ちょっと待って!」


言いかけた私を後回しにして、里佳子は受付に来た患者の応対を始める。

私は、ふらふらと鞄を取ると、患者と話している里佳子に背を向けて更衣室へと向かった。

今日は、私は早番。里佳子は残り番だ。

一緒には、帰れない。



・・まさか、里佳子じゃないよね?




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