%コード・イエロー%

うっすらと立ち上る3本の煙をぼんやりと眺める。

確か、過去、現在、未来への供養なんだっけ。

それなら姉は、こうやってお線香をあげれば、未来も供養されるのだろうか。

もう、苦しまなくてすむのだろうか。


私は鞄から携帯を取り出すと、父へメールを打った。

私から連絡を取るのは、何年ぶりだろうか。

不思議と何の躊躇もなかった。

自分が切羽詰った状況だからなのか、それとも姉が私のかたくなな心を溶かしてくれたのか。


『父さんへ。春菜ちゃんの誕生日、覚えててくれたんだね。私も今お墓の前にいます。

どうもありがとう 夏夜』


裁判が敗訴し、執拗に追われたマスコミから逃げるようにして地元を去った。

喧嘩の耐えなくなった両親は離婚し、私は母に引き取られた。

母が心を病んだのは、多分次々と起こる現実から、自分の身を守ろうとした結果に違いない。

もう一人の、守るべき小さな存在に目を向ける余裕もなく。


今なら、ほんの少しだけ両親の気持ちがわかる気がする。

人は小さな存在で、ちょっとしたことで傷つく生き物だから。


すっと通り抜けた風が、私の心に優しく触れていった。



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