%コード・イエロー%
なんとなくすっきりしないまま、私はマンションへの道を歩き始めた。
駅からマンションに帰るには、病院の前を通らなければならない。
遠くからでも目立つその大きな建物は、あいかわらずの存在感でただそこにあった。
・・亮雅に、会いたいな。
こんな目に合っても、亮雅に会いたいと思う自分が滑稽だ。
男に振り回されている何人もの知り合いを見ながら、なんて愚かな人々だろうって思ってたけど。
そうなんだよね。当事者でなきゃ、わからない気持ちっていうのは確かにあるもので。
はたから見れば、私も医者に遊ばれた馬鹿な事務員に見えているんだろう。
遊ばれてるのにそれでも好きだなんて、頭悪いね、って。
でも、気持ちっていうのはそう簡単に切り替えのできるものじゃなくて。
捨てられました、はい次の男に行きましょう、ってそんな風には思えないよ。
病院の救急外来に救急車が止まっているのが目に入る。
ひょっとして亮雅がいないかと思って目を細めてみたものの、残念ながらそこに立っているのは別の研修医だった。
「あれ? 藤崎さん?」
急に後ろから呼び止められて、私は体が硬直する。
まるで悪い事をしたのを見つかった子どもみたいに。